月の花とウサギの涙

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ここは、月。 ただ一匹、毎日、一生懸命に土を耕すウサギがいました。 ウサギはいつから此処にいて、どこから来たのかもわかりません。 名もなければ、自分の歳すらも分かりません。 でも、ウサギには1つの夢があります。 それは、この金色の大地一面、そうウサギの立つ場所から目に映る全てを花畑にする事でした。 いつからか、このなにもない果てのない金色の大地を見て ふと、ウサギの心に浮かんだ想い。 初めて目的を持つ事ができた。 生ある者必ず何かを成すために生まれてくるのであって、けして意味無くして生まれてくる事は無い。 目的があって、初めて生きる意味を見出だすのです。 今まで何も無かったウサギにとって、その夢は何よりも大切で、何よりもウサギに自信と使命を与えました。 くる日もくる日も土を耕し、種を蒔き、水をやる。 ただひたすらに同じ事を繰り返す毎日。 それでもいっこうに土から花の芽が出てくる事はありませんでした。 なぜだろう、やり方がダメなのかな? それともこの種のせい? 水が足りないのかな? 僕がやっている事は、無駄なのかな? それからというもの、毎日、毎日悩みました。 自分のやっている事が報われ無いとき、自信を無くし、投げ出したくなりますよね。 なあなあと土を耕し、種を蒔き、水をやる。そんな日々が続き、ある日とうとうウサギは、クワを投げ出し、自分の家に篭る様になりました。 今の一度も芽が出ない…。 結果のでない事での毎日続けて行く事への不安や 不満や怒り。 そして、最後は自己嫌悪。 こんなにも頑張っているのに結果が出ない。 ウサギは、ふと自分の手を見ました。 爪はボロボロで、隙間には土が詰まり、手の平は豆だらけ。 豆が潰れて、そこへ更に豆が出来る。血と砂が摩り込まれたそれはとても醜くて、とても汚いモノに映った。 いっそ、こんな事はやめて以前の様に、特別な事はしないで何もせずに生きて行こう。 何もしないっていうのはどんなに楽か。 自分の世界に篭るのはどんなに楽しいか。 結局、ボク以外誰もいないこの世界でどんなに頑張ったって、誰も褒めてくれないし、誰も認めてももらえない。 もちろん、褒めて欲しくてやってる訳じゃない! ……誰も? ウサギは、初めて気付きました。ずっと一人で生きてきたウサギにとって他の誰かなんていなかったのですから…。
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