月の花とウサギの涙

3/4
前へ
/4ページ
次へ
一人でいる事が当たり前で、昔も今も何も変わらない世界。 じゃあボクはなぜ存在するの? そう考えると、胸がギュッと締め付けられ、頭から意識が引き離される感覚に襲われました。 初めてウサギに襲い掛かる掃けようのない思い、溢れ出す心の中でウサギはたまらず、叫びながら外へと飛び出したのです。 苦しいよっ! 辛いよっ!! まるで自分が自分では無くなっていく様な感覚に涙が溢れました。 自分以外の仲間と言えるものが存在しないこの世界でウサギはどこまでもどこまでも走りました。 いつしか息が切れ、酸素が足りないせいか、思考もあやふや。 ついには、地面へと転がる様に倒れ込みました。 ウサギはすっかり生きる事への執着を失い、初めて死というものを感じました。 このまま自分が無くなったらこの苦しみからも逃れられる。 悩まなくていいならどんなに楽か…。 それに、これ以上生きてなんの意味があるのか、初めて目的を持った時の喜び、毎日が楽しかった。 明日には、きっと芽が出ているだろう…ここ一面はこんなにも立派な花畑になるだろうと…。 今まで感じた事のない感情が生まれて、いつしか自分自身の事までも考える様になっていた。 次から次へと感情が胸の奥底から溢れてくる。 胸が苦しくて、もう想いを溜める事が出来ないよ。 「一人じゃ生きて行けないよ!!」 気が付くと、いつしか止まっていた涙がまた溢れ出だし、鼻水はダラダラとそりゃもう酷い顔でした。 ウサギは思い切り泣き叫び、胸に溜まった想いを吐き出す様に、自分に別れを告げる様に…。 溢れ出す涙は、不安と共に魂の意味と存在を自信に示し、尚も絶望へと導く。 ふと、耳に触る感覚。 さわっ、さわっ、優しい風にそれは揺れた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加