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「お待たせ致しました」
(ゲッ、この人も若いし……)
ムッとした母の顔色を察し、曲がりそうになった背筋をピッと伸ばす。
流石に一日二発のクリームパンチは背中が持ちそうにもない。
「佐々木、順也様ですね?」
「は、はい」
「アンタ……」
「よ、よろしくお願いします!」
威風堂々とした隣りのジャイアンは、僕の股間を締め付けるよう、常に睨みを効かせ続けている。
「そんなに堅くならなくて良いですよ。今日、どうこうするって訳ではないですから。今日は、登録するだけ。って考えて戴ければ大丈夫ですよ」
「あ、はい」
にこやかに、目の前の女性は言い慣れた文句を放つ。
それで、少し落ち着いてしまった僕も僕なのだが、幸いにも母にはその言葉が気に入ったようで、顔が鬼から恵比須へと変化していた。
「申し遅れました。私、佐々木様を担当させていただきます、深山(ミヤマ)と申します。当社からのご連絡は、すべて私からご連絡差し上げますので、よろしくお願い致します」
そう言うと、僕と母の前に、深山さんの名刺が一枚ずつ置かれた。
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