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食事を済ませ、母が食器を洗って隙に、僕は二階の自分の部屋へと逃げ込んだ。
明日は仕事。駅からほど遠い家から会社に通うには、朝五時起き、五時半出発じゃないと始業に間に合わない。
一日七時間睡眠を目指す僕としては、風呂、飯、睡眠。は一気にやってしまわなくてはいけない日課だった。
「順也!」
「おやすみなさーい」
母の心情を読むのも、神懸かり的な感性を擦り抜けるのも、二十七年も一緒なら簡単なこと。
「お父さんが……」
階段越しに小さく聞こえる母の声。
やはり今日"も"犠牲者は父上殿。かたじけない……。
明日の準備を整え、(とは言っても、特に準備するものもない)早々にベッドに横になる。
僕にとって、ここと、トイレと風呂は一番落ち着く場所なのだ。
しがらみもない。
小言もない。
まさに自由……というほど大層なものではないけれど、横になって、いつの間にか寝てしまう。そんなことが、毎日の小さな幸せになっていた。
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