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「痛がってるのを見て止めるくらいなら、俺とは二度とセックスできないよ。」
キッパリ言う一宮に幸野は、
「それでも、俺は一宮さんに酷くはできません。」
と、悲しげに答える。
「いくら同じ男だからって、遠慮なく貫いたら絶対痛いに決まってる。
俺、そんな風に一宮さんを抱きたくないんです。」
ぼろぼろ涙をこぼす幸野に、一宮は目を閉じてふっ、と笑って、
「幸野は今までの性欲処理の奴らとは違うのを失念していたみたいだな。」
と、呟いた。
「なっ。当然です!俺とそんなやつらを一緒にしないでください!!」
と、一宮の頭で幸野が叫んでいる。
現実の幸野は涙を拭くのに必死で、一宮の呟きを聞いていなかった。
「さて、幸野。今日は済まなかったね。セックスは、また日を改めて。それまでは、デートくらいはしよう。」
エッチが出来なかったからといって、はい、さよならはありえない。
努めて恋人同士の楽しみを満喫しようという意味をこめて話す一宮。
「はい…。また明日、一宮さん。」
うなだれながら、とぼとぼ歩きだす幸野。
その日はなんだかぎこちなく、しっくりこない一日になってしまったのだった。
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