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「俺と、付き合ってください!一宮先輩!!」
始まりは、この一言だった。
この学園の中で知らない者はいない、一宮優仁に告白するという勇気のある、黒髪黒眼の男、幸野雅は高校2年生。
告白場所は、校庭の(一部の男子に「先走り桜」と呼ばれている)桜の木の下だった。
桜はもう満開で、早い部分はもう散り初めているから、2人の周りは雪と桜が綺麗に舞っている状態だ。
そんな幻想的な風景のなか、一宮の返事は。
少し濃い目の茶髪にカラコンを入れたと噂されている碧眼を細め、中性的な顔を微笑ませ、
「…うん。」
と、頷きながら一言返事した。
「ただし。」
一宮は付け加える。
「えっちをするときは、俺はネコになるから。そこだけは守って。」
あまりにも真剣な顔で言うものだから、幸野は最初、何を言われたのか分からなくなるほどだった。
だが、何を言われたのか悟ると、顔を赤くする。
が、すぐに顔の赤さが引くと、
「はい!」
体育会のごとき声が出た。
そして幸野は、この日を一生忘れないだろうと思った。
しかし、この日よりももっと衝撃的なことが起こるとは、夢にも思わなかったのである。
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