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「幸野、家に来なよ。俺のこと、知っておきたいだろ?」
一宮は、幸野を自分の部屋へ誘った。
それはつまり…
「俺を…誘ってるんですか?!」
「そうだよ。俺とヤリたくない??」
「そ、そりゃ、したくないといえば嘘になりますが・・・」
もごもごと歯切れの悪い答えを返す幸野。
「じゃぁ、いいね。・・・おいで。」
その言葉とともに、一宮はつないでいた手を離し、まるで女性をエスコートするかのごとく幸野の正面に回ると、恭しく手を差し伸べる。
優雅なその姿勢に、ボーっと見とれてしまう幸野。
「・・・これって、結構恥ずかしいね。」
はにかんだ笑顔を見せると、差し伸べた手を戻し、また元の通り繋ぎ直して歩き出した。
まだボーっとしていた幸野は、急に引っ張られて驚いてしまった。
「あ、ゴメン。」
「い、いえ、見惚れてた俺が悪いんですから。一宮さんは悪くないです。」
「見惚れてた?本当?」
「はい、まるでバレエのごとき優雅さで、俺もう感動しちゃって・・・、あ、すみません・・・。」
本人目の前にして嬉々としゃべり始めたと思ったらすぐに尻すぼみしてしまった幸野を軽く笑い、
「幸野、ありがとう。」
という一宮。
「あ、俺のうち、ここだから。」
と、アパートの一室を指差す一宮。
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