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そこは、5階の506号室だった。
「最上階の一番左端。わかりやすいでしょう。」
「はい。」
「…どうぞ。」
一宮は、自分の部屋へと案内した。
「・・・一宮さん、アパートだったんですね。その・・・近所の人は平気なんですか?」
椅子に座りながら幸野は、家を見たときから気になっていたことを聞いてみる。
「俺のうちの周りは、みんないない。隣も下も、斜め右だっていないんだ。」
「なぜですか?」
他の部屋は家族が団欒したりして、にぎやかな笑い声が聞こえてきたのに。
幸野は、静かすぎる505号室のあるであろう方向をちらりと見ながら聞いた。
「さぁ、なんでだろう。でも。」
お茶を持ってきた一宮は、テーブルに置きながら答える。
「そのおかげで、幸野とどんなことになっても恥ずかしがらなくていい。」
さらっと大胆な発言をした一宮に危うくお茶を吹き出してしまいそうになるが、なんとか留めて(しかし むせてしまった)、
「一宮さん~。けほっ、吹きかけましたよ~。」
と言う幸野。
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