大切なもの

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シンだと分かり小夜は小走りで近づいて来た。 「やあ久しぶり、怪我はもう大丈夫?」 それまでのそっけない態度だったシンから声をかけられ、小夜は胸が熱くなるのを感じた。 祖父と澪に全てを聞いていた。 目の前にいるのはこの世の者ではない.... 自分とは文字通り住む世界が違う.... そう理解したはずだが、やはり心の中ではシンに対する思いを消す事が出来ずにいた。 「あの....色々とありがとうございました....シン君のおかげで....私....私....」 小夜の瞳から涙が溢れ出した。 三途の川ではレイと祐子が大規模な結界を張り、下流から現れるであろう餓鬼の群れを阻止しようとしていた。 結界の向こうでは裕太と心界から引き返した純と大河が、防衛軍を引き連れ待ち構えていた。 「キャシーっ!聞こえるかっ!?....じじぃと親父さん、本当に大丈夫なんだろなっ!?」 耳に埋め込んだイヤホンからキャシーの返事が聞こえた。 「武田を呼ぶと言ってますから恐らくは問題ないと思います。」 裕太は首を傾げた。 「そんな奴いたか?じじぃの兵隊か?」 「は?神様、知らないんですか?」 キャシーのため息がは裕太に届いた。 「な、何だよ?おまえ知ってんのかっ!?てかみんな知ってんのかよっ!?」 裕太が見渡すと純も大河も首を横に振った。 「神様っ!来ますっ!」 大河の叫びに続いて純の合図に合わせ一斉射撃が始まった。 「何っ!?」 防衛軍5万人からの攻撃を受けたのは餓鬼の群れではなかった。 「で....でかい....」 裕太の前に一体の巨大な餓鬼がその姿を現した。 「何だこの化け物はっ!?」 地獄から天国に到着するまで共食いを続け最後に残った餓鬼がそこにいた。
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