大切なもの

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「来た....」 心界王は呟くと空を見上げた。 「早かったのう....」 天老院も顔を上げた。 法螺貝の音と馬の嘶(いなな)きが鳴り響いてた。 「天馬をあそこまで自由に操るとは....」 2人の視界に天馬に跨った大軍が所狭しと暴れているのが映っていた。 「もう結界もいらんじゃろう。」 そう言うと天老院は結界を解いた。 その瞬間、餓鬼の群れが心界になだれ込んで来た。 「大丈夫ですか?」 心界王も落ち着いて見ていた。 空から無数の矢が降り注ぎ、餓鬼たちを打ち抜いた。 「もう時間の問題じゃな。あとで武田に土産を持って挨拶に行くか....」 天老院は揺れる旗を見ながら呟いた。 『疾如風徐如林侵掠如火不動如山』 武田騎馬隊3万の勝鬨(かちどき)が三途の川上空に響き渡っていた。 「天国の方が心配じゃ....餓鬼が巨大化しとるかも知れん。」 天老院の危惧が的中していた。 「里沙に連絡して大型の消滅弾を用意させろっ!通常のじゃこいつには効かねーっ!」 防衛軍の攻撃が全く通用しなかった。 餓鬼が結界を押し始めると光の壁が揺れ出した。 「裕太君!ダメっ!破られるっ!」 レイが叫ぶと裕太は両手を握りしめ気合いを入れた。 「うおぉぉぉぉおおおっ!」 裕太の全身が光り輝き始めた。 「それ以上....」 餓鬼に向け両手を伸ばすと裕太は叫んだ。 「行かせねーっ!」 裕太の両手から放たれた光の帯が餓鬼に襲いかかって行った。 その体に巻き付いた光が徐々に餓鬼を締め上げ、裕太が勝利を確信した次の瞬間! 「グワッ!」 餓鬼の体に巻き付いていた光の帯が引きちぎられた。 「何いっ!?」 肩で息をする裕太を無視するかのように餓鬼は再び結界に手を伸ばした。
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