大切なもの

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「八戸総理から聞いたけど、君はお孫さんなんだってね?」 泣き止んだ小夜にシンは声をかけた。 なぜ小夜が涙を流したのかは理解出来なかった。 「は....はい....お祖父ちゃんを....助けてもらっ....」 そこまで言って感極まった小夜はシンの胸に飛び込んだ。 「え!?ちょちょちょっと待って!」 予期せぬ突然の小夜の行動にシンは焦り、小夜の両肩を掴み引き離した。 「私....私じゃダメなんですかっ!?私....私....」 小夜はそれまで抑えていた感情をシンにぶつけていた。 「レイっ!祐子っ!逃げろっ!」 餓鬼が結界を破って侵入して来た。 防衛軍はありったけの弾丸を撃ち込んだが、巨大化した餓鬼は何の反応すら示さずに目の前にいる祐子に向かい襲いかかった。 「祐子ちゃん!」 レイは再度結界を張ろうと試みたが、既に力を使い果たし思うように体が動かなくなっていた。 餓鬼の手が祐子に届きかけた時、美和の叫び声が響いた。 「ユーコっ!伏せて!」 その声に合わせ祐子が身を屈めるのと同時に巨大な空気の塊が餓鬼に撃ち込まれた。 「今よっ!神様っ!ユーコとレイさんをっ!」 そこにはバズーカ砲に取り付けた長い取っ手を両側から支える美和と梓、圭と真紀の姿があった。 「おまえらナイスっ!」 餓鬼は圧縮弾により数十メートル吹き飛んだが、すぐに立ち上がると怒り狂って突進して来た。 「もう一発行くよっ!」 圭の号令で4人は再度バズーカを餓鬼に向けた。 と、餓鬼が右手を振るとその指先から液体のような物が飛び出し4人に命中した。 「うっ!」 「キャッ!」 「何っ!?」 「動けないっ!」 それは粘着力の強いゼリーのような物質だった。 4人はその場でもがく事しか出来なくなってしまった。 「ヤバいっ!」 裕太がすぐに4人を結界で包み込もうとしたが、裕太もレイや祐子同様に先程の攻撃でかなりの体力を消耗していた。 「くそっ!力が出ねーっ!」 餓鬼は今度はゆっくりとした動きに変わり、捕らえた獲物に向かい歩き出した。
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