大切なもの

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「くっ!」 裕太はレイと祐子を純に託し残る力を振り絞り餓鬼に飛びかかろうとしたが、餓鬼は振り向き様に先程と同じように右手を振り、周囲にいた者全てを美和たち同様その場に貼り付けてしまった。 裕太も大河も、レイと祐子を支えていた純も全く動けなくなっていた。 「ちくしょーっ!里沙は間に合わねーのかっ!」 裕太の叫びが虚しく響いた。 餓鬼が美和たちに近づいていた。 「お姉ちゃん!」 祐子が体を起こして叫んだ。 「お姉ちゃん!お姉ちゃん!誰か....誰かお姉ちゃんたちを助けてっ!私の大切なお姉ちゃんたちをっ!」 シンは小夜が自分に対して好意以上のものを抱いていたと初めて気がついた。 「ごめん....俺、君の気持ちに応える事はできないよ....」 「え!?」 小夜の驚きはシンの言葉に対してではなかった。 シンの体が少しずつ光に包まれていた。 「シン君?」 洋一郎もシンを見上げ目を丸くし、シン自身も何が起きているのか理解出来なかった。 「あれ?これ....」 祐子の叫びは続いていた。 「ダメーっ!お姉ちゃんたちに近付かないでっ!....シン君....助けて....シン君....」 シンの体が更に輝き始めた。 「‥‥」 小夜は茫然と見つめるだけで声を出す事も忘れていた。 「聞こえる....祐子ちゃんが....」 祐子は両手を組んで祈った。 「シン君....助けて....お姉ちゃんたちを....みんなを助けて....シン君お願い....」 シンは両手を天に向け目を閉じた。 「祐子ちゃん!」 祐子は瞳を閉じて叫んだ。 「シンくーーんっ!」 シンを包んでいた光が飛び散ると、小夜と洋一郎の前からその姿は消えていた。
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