大切なもの

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里沙は研究室に籠もっていた。 実体化を実現させたリストバンドの改良に長い時間打ち込んでいた。 「必ずまた必要になる時が来る....」 装着する事により、能力を高める事が可能になるのが目標だった。 「‥‥喉渇いたな。ちょっと誰かっ!牛乳持って来てっ!」 天才科学者・里沙もこれから起こる悲劇をこの時点では予測出来ずにいた。 純と大河は弘明を鍛えていた。 「じゃあ実戦行こうか。」 純の言葉を弘明は繰り返した。 「実戦行こうか....ですか?」 大河はストレッチをしながら弘明を見ていた。 「ああ、行って来い。大丈夫、向こうに話はつけてあるし、どうやらこの間の残りがまだいるみたいだから、思い切りやれるぞ弘明。1泊2日な。」 弘明は顔面蒼白になりながら純に引きずられて行った。 「地獄だけは勘弁して下さーーーいっ!」 弘明の地獄行きに仲間が出来るとはまだ誰も知らずにいた。 居住区の中にある公園のベンチに並んで座る2人がいた。 「祐子ちゃん、あのさ....俺....」 祐子は下を見たままで背中の羽根をパタパタとさせていた。 「あのさ、俺....祐子ちゃんとまたこうして逢えて良かった....」 シンは自分でも信じられない程に照れていた。 「シン君....」 「何っ!?」 祐子は下を向いたままでシンに問い掛けた。 「あの人....西井出小夜さん....シン君、あの人の事を好きなんじゃないの?」 「えっ!?いや、あの子とは何もないからっ!」 祐子の口から小夜の名前が出てシンは焦った。 告白されたのは事実だが、それを祐子に誤解されたくはなかった。 「でも....すごく可愛い人だったし....スタイルも....」 祐子は足をブラブラとさせながら呟いた。 「マジで何とも思ってないからっ!そうだ!洋一郎さんに聞いてもらえば分かるし、澪さんだって!」 祐子の動きが止まった。 「祐子ちゃん?....何か怒ってる?いや、俺絶対に違うから....あの....」 祐子の肩が震えだした。 (ヤバい泣いてるっ!) シンがオロオロとしていると小さな笑い声が聞こえて来た。 「ふふふ....あははははっ!シン君たら面白ーい!」 笑いをこらえていた祐子が吹き出した。
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