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公園で佇むシンの携帯が鳴った。
「もう....誰だよ?」
携帯を見ると着信は父親の神坂裕太からだった。
「父さん、何?」
シンのぶっきらぼうな態度に、電話の向こうで裕太は意地悪く話した。
「お?フラれたか?」
確信をつかれてシンはキレた。
「ば、バカ言ってんなよっ!俺がフラれるわけねーだろっ!祐子ちゃんは大天使院で会議があるから....何の用だよっ!?」
裕太は通話口を押さえて側にいるレイに小声で話しかけた。
「今日、大天使院で会議なんてあったか?」
レイはキョトンとしながら首を横に振った。
「....フラれたな。」
電話の向こうからシンが何か叫んでいるのが聞こえた。
「父さんっ!用がないなら切るよっ!俺だってまだ....」
「今から心界へ行くからすぐに来い。」
心界?
「おじいちゃんの所?遊びに行くならパス....」
「いいからすぐに来い....急げ。」
シンがこの天国で、もっとも恐れているのは怒った時の裕太だった。
去年悪ふざけが過ぎた時は地獄に連れて行かれた。
「....はい。」
父親の裕太はシンを束縛しない。
放任とは違うが、基本的には自由にさせている。
つまらない用事で人を呼びつけたりしない事をシンは知っている。
「何の用なんだろ....」
祐子の余韻が残るベンチに目をやると、シンは官邸に向かって走り出した。
シンの体が光に包まれた。
おそらく一般人には目視できないだろう。
光る風が吹いた....それくらいの認識が精一杯だ。
シンは数秒で裕太とレイが待つ神の官邸に到着した。
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