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正直、俺は今日ほど最悪だと思った日はない。
「……ひーくんさん、ひーくんさん。何でアナタがここにいてくれてるんですか?」
「さぁ? ただ謝りたいから付き添ってくれって斬原さんに言われて了承も無しに引っ張ってこられただけで何とも……」
あからさまに不機嫌な姉さんに対し、そうあっけらかんと答える、青年。
姉さんの友人である『ひーくん』と呼ばれる人物は世界一美しい姉さんとどうしてか友人以上の関係であり姉さんからの圧倒的な片思いのお相手である彼は、姉さんになんか興味がないと言わんばかりに姉さんからの恨めしそうな熱視線を無視しながら遥香さんが持ってきたお茶をゆっくりと飲みながら溜め息を付いて目の端でその発端であるらしい斬原さんを見る。
「本当に、申し訳ありませんでした、鳳凰堂の」
床の上で土下座をする、癖だらけのくるくるとした赤い髪。丸く大きな紅を帯びた瞳。椛のように鮮やかな朱い着物に映える、病的に細く白い肌をした女性。
斬原流香、の大人版。
「いえ。別にアナタに殺されかけたことなんかはアナタの名である『斬原』の特性を知っている以上どうでもいいんですよ。……ただ、ただですねぇ……」
不機嫌を隠さずに姉さんが一言。
「何でアナタはわたしのお気に入りのとこに居候になってくれちゃってるのかが気に食わないんですよ」
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