君がいたから

-母の過ち-

食事、排泄、風呂、暴力……。

それだけが繰り返される少女のまだ短い人生。

生きていくにはあまりに苦痛過ぎる。

止まらない彩の虐待にかりんの体は当然のことながら、心までもが荒れ、かりんはやがて人形のようになってしまった。

もう殴られようと蹴られようと、痛かろうと苦しかろうと、声を上げる気にもなれなかった。

ほんの数年前まで未来への希望に 満ちていた瞳は輝きを失い、今ではただ見たものを判断するだけの器官に成り下がってしまった。

「今日はこれで遊ぶわよ？」

目をギラギラと輝かせ、不気味な笑いを浮かべる彩の手には何かが握られていた。

（きょうはムチだ。）

これはかりんも知っていた。

前にこれで叩かれたことが何度かあったから。

あの頃はまだそれが振り下ろされるたびに痛みに叫んでいたが、今はもう何も感じずに無言のままでただ叩かれ続けていた。

そんなかりんの態度が癇に障ったのか、彩はふいに手を止め、かりんと目線を合わせて座り込んだ。

二人の目が合うことはない。

かりんはぼんやりとどこかを見つめたまま、彩を見ようとはしない。

そんなかりんに対して、彩は無愛想に訊ねた。