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「検査の結果が出ました。」
医師のその言葉に、病院に同行した警官の“高杉誠”は立ち上がった。
「こちらへどうぞ。」
診察室へと誘導され、静かに椅子に腰掛けた。
「あの、かりんちゃんは…。」
医師は眼鏡をくいっと持ち上げ、高杉を見つめた。
そして一息ついてから、ゆっくりと口を開いた。
「かりんさんは外傷こそひどいものの、内臓に大きな異常はありませんでした。」
低く安定したその声に、高杉は何とも言えない心地よさを覚えた。
そしてそれと共に大きな安堵感が押し寄せ、思わず溜息をついてほっと胸を撫で下ろした。
「ですが…。」
「何かあったんですか!?」
思わず冷や汗が出た。
医者のひどく勿体ぶる姿に、焦りが増していく。
「胃腸がひどく荒れています。相当なストレスを感じていたのでしょう。」
何とも言えない気持ちが、高杉の心を支配した。
胃腸だけで良かったと思う反面、あんなに小さな子供が胃腸を荒らしてしまうほどのストレスを感じていただなんて、にわかに信じがたい。
それでもかりんが虐待を受けていたという事実を考えれば、当然のことなのかもしれない。
黙りこくったままの高杉に医師はある提案をした。
「おそらく、この調子では食事もままならないでしょうし…どうでしょうか。
胃腸が良くなるまでここにかりんさんを入院させてみては?」
『確かに…』と言葉を漏らし、高杉は答えた。
「ではお願いできますか。
精神的なものもありますし…こちらにいる間にカウンセリングを受けさせられればいいのですが。」
「わかりました。
すぐに手続きを致しましょう。
カウンセラーも手配しますので。」
医師の迅速な対応に、高杉は思わず感心させられた。
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