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それにしても良かった。
どうしてあたしのところには、あの丸くて青い未来からの使者が来ないのかと常々疑問に感じていた。
あたしだってあの眼鏡のろくでなしに負けず劣らず無能なのだから、来てもおかしくないはずだ。
長年夢見た未来からの使者はあたしのところへやってきた。
この際、丸くなくとも青くなくとも、机からの這い出し方が多少気味悪くとも、歓迎だ。諸手を挙げて歓迎してもいい。
「本当は良くないことなんです」と彼は言った。
「実に良くない。
過去を変えてしまうことは、つまりあなたの存在そのものを否定するのと同じです。
運命を変えてしまうことは、つまり世界そのものを否定するのと同じです。」
彼は優雅な動作で椅子に掛けると、西日が眩しかったのだろう、僅かに目を細めてそう言った。
その言葉にも関わらず彼があたしの目の前にいるということはどうか事なのだろう?
そうしてあたしとあたしの世界を否定してまでも変えざるを得なかったということだろうか?
一体あたしは何をして、どこまであたしの子孫を不幸に追いやってしまったのだろう。
聞けるだけの勇気は持ち合わせていなかった。
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