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序章*追憶しまして、戦慄く。
俺についてわかっている全て。
名前、赤沼夏芽。
年齢、十七歳。
身長、平均値。
体重、平均値。
学業、絶望的。
運動、絶望的。
視力、虫並み。
趣味、パズル。
友人、一握り。
特技、縄跳び。
成績は悪いが決して勉強してないという訳ではなく。
頭が悪いというか、頭の造りが悪いための成績不振であるため、親はとやかく言わない。
朝には滅法弱い。目覚まし一つでは起きれない。
素行は問題なし。目立たない事が取り柄といえば取り柄。影は薄くもないが濃くもない。
視力は最悪。眼鏡がないと学校にも行けない。どれくらい悪いかと言うと、コンタクトレンズがつけられないくらい。
の、筈だった。
「……………」
俺は絶句していた。
路地裏の壁に背を寄せて寝ていたからではない。誰にも起こされずに目覚めたからでもない。勿論、大事な大事な眼鏡が、自分のまっすぐのばした足の先で粉々になっていたからでもない。
むしろ、問題はそれだった。
なぜ、俺は自分の眼鏡が粉々になっているのが見える?
もしやと思い、顔を撫で回してみたが、しかしやはり何もなかった。眼鏡などない。
そう。眼鏡をかけていない。
(…視力が、回復、している…?)
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