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大通りに面したこのカフェに来るのは二度目だった。けれども、優子が一番好きな店はここではない。
目を閉じ、鮮やかな緑に囲まれた丸太小屋をまぶたの裏に浮かべると、胸の奥に切ない風が吹き抜けたのだった。
※ ※ ※
「俺を怒らせるお前が悪い!」
「泣くな!泣くなって言ってるだろ!泣く女は嫌いなんだよ!」
――激しい怒号と同時に平手打ちで頬を打たれる。
そこで優子はハッと目を覚ました。
いつの間にかぐっしょりと寝汗をかき、無意識のうちに震えていた。夕方のカフェでのくつろぎですら、完全に優子を癒すことができなかったのだ。
床についてから夜の闇がこのように襲いかかって来るのは、彼女にとってめずらしいことではなかった。
「いつまで私を縛り付けるの……」
一人の部屋でぽつりとつぶやき、スワロフスキーがちりばめられた美しい間接照明をつけると、シャワーを浴びに浴室へ向かった。
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