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男との地獄のような暮らしの中、自らの歪んだ愛を携帯小説に綴ることで、自分を白に近付けようとした。それが《甘く、芳醇な君へ。》だった。
主人公に自分の姿を投影したその作品の閲覧数は日がたつにつれ増えていき、人気クリエイター《美優》としてサイト内で一躍有名になった。
しかしそれとは反比例に、優子は苦しくなった。どうあがいても、自分は完全な白にはなれない。一見白に見えても、本当はどこか薄汚れている。小説と自分自身との食い違いが辛くなり、執筆の手は止まったのだった。
一人だけ、そんな優子の本質に触れた男性がいた。
山の上にあり、優しい時間をもたらしてくれた丸太小屋のカフェ《ピオーネの丘》で出会った、篠田 誠という青年である。
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