一本目

7/11
前へ
/70ページ
次へ
      「貴様が戦えば、満足だ」     この唯我独尊執事がっ。 仕方ないから手を離し、姫ちゃんから一定距離を取った。   決して戦うわけではない。あくまでも俺は守りに徹する。 一応手は出すが、拳を握らずに手を開いておく。       「ようやく、やる気になったか。今なら人もいないから、丁度良い」       姫ちゃんは真半身に立ち、左手を上げて俺に向け、右手は握って後ろ腰に添えて立つ。 まったく見たことの無い構え方だが、俺はノーガードで両手を広げて挑発している。   案の定姫ちゃんは隙有りと言わんばかりに駆けてきて、俺の懐に入る。 易々と懐に入れさせた俺は、姫ちゃんの入り具合から必ず腹部、又は下半身を攻めるだろう。         「疾っ!」   「…っぐぅ…!」       予想通り腹部に打撃が来た。 重い拳……体を貫く勢いで来ているため、鉛のような重さを誇っている。   数歩、後退したが、俺は姫ちゃんの片腕を掴み、逃がさぬように強く力を入れた。     ぐいぐいと姫ちゃんは腕を動かし、抜け出そうとするが、流石にそこは男女の身体的能力差。 俺の方が力が勝っていて、姫ちゃんは抜け出せない。         「もうさ、痛いの嫌なのさ。どぅーゆーあんだーすたん?」   「くっ…知るかっ!」       姫ちゃんは今度は足で臑を蹴ってきて、モロに蹴られた俺は悶える。 手は離れ、弁慶の泣き所を蹴られた俺はしみじみとこう思う。   かの有名な弁慶も、この攻撃には涙をながしたのだ…と……      
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

943人が本棚に入れています
本棚に追加