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真っ赤な返り血が扇子を覆い隠し、地にひれ伏す二人の愚か者を冷徹な瞳で見下ろす。
扇子は真紅に染まり、鮮血が地面に滴り落ちていく。
「……クソが…あの状況においてもまだ、コイツを狙おうとするとは…」
懐から取り出したハンカチで扇子に付く鮮血を拭い去ると、袖にしまい込んだ。
同時に、後ろから先程襲われていた女生徒が恐る恐る俺に近付いてくる。
俺は背中を向けたままその女生徒に話し掛けた。
「怖がらせてすまなかった。だが、夜中に一人で歩くあんたも悪い。
悪いことは言わない…早々に家に帰れ。あんたを待っている人もいるだろう」
「……待っている人なんて…いない…」
何か事情があるんだろう。
俺は他人、干渉は無意味、無駄な詮索は不要。
プライバシーもある故、マスターの監視がある故、俺は深く関わる事はしない。
「…私は一人が一番落ち着くの…!」
「そうか、なら俺と同じだな。今すぐ自宅へ帰れ。注意なんて生易しくはない……じゃないと俺があんたに手を出すぞ」
「……っ!……えっち…!」
そう吐き捨てて、女生徒は駆け出した。帰宅への道だろうが、一応俺はそいつの後ろを追うように歩き始めた。
マスターの占いには、最後まで見張るように出ていたからな。
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