第一色

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      肉眼で目撃できる限りの距離を保ち、限り無く息を潜め、音を消し去る。 ストーカーと間違えられても仕方がないが、マスターの命ならば致し方がない。   俺は彼女の後ろを付いて監視し続ける。ちなみに血を拭ったハンカチはきちんとゴミ捨て場に分別して捨てたさ。     こう見えても俺は今までにマスターから色々な事をさせられている。 何故か分からないが、人間を見張ったり、喫茶店には全く関係無い修行地味たことまでさせられたり……嫌になったよ。                           ―――ふと、前を歩く彼女が立ち止まった。 だが俺は立ち止まらずに、ゆっくりと歩行し続ける。その理由は、わざわざ立ち止まったらストーカーと思われる率が凄まじく高くなるからだ。   夜道に後を付ける時点で怪しいが、彼女を追い抜けばそんな考えは薄れるかもしれない。       俺は彼女を追い抜いて十数メートル進んでから左へと曲がった。   すると、彼女は走って俺の後を付いて来て、前を歩く俺の背中にドロップキックをかましてきた。     不意を喰らった俺は前方へと吹き飛ばされてゴロゴロと地を転がる。 ……何しやがるコラ…!           「…何で付いて来るの…?やっぱり…あなたも私を狙ってるの…?」   「悪かった。あんな事があった後だからな……心配しただけだ」       まさか気付かれているとは思わなかった。これでも一応追跡の自信はあったんだがなぁ。 まぁ、一人が好きだと言う奴が、いつもと違うような雰囲気や気配は何となくだが分かるんだろう。   起き上がって土埃を払うと、彼女は俺を覗き込むように見上げてきた。 身長は俺の方が高いため、必然的に見上げる形になる。      
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