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………いや、今のはおかしいだろ?ただ探していたら、そう呼ばれるのか?
答えは否、流石におかしすぎるだろう。いくら何でもそれは被害妄想が激しい。
「まぁ、別にただ気になっただけだから、深い意味はない。じゃあ、俺はバイトがあるから帰るさ」
踵を返し、俺は図書室を出て行った。今日も、瑞希さんが来るからきちんと対応してあげないとならない。
足早に校舎を出て、校門を過ぎて少し歩いた後、俺は何やら不思議な感覚を覚えた。
何故か、後方に引かれる…そんな妙な感じが俺を包み込む。
ふと、後ろを振り向いてみると、先程別れたはずの彼女が制服の裾を引いていた。
……何やってんの…?
「…一緒に連れてって…?」
「つまらないぞ?俺が行くのは喫茶店のバイトだからな」
「……うん…構わないの…」
拒む必要性も無いから、俺は彼女と共に喫茶店へのバイトへと向かった。
そう言えば、俺まだ彼女と自己紹介をしていなかったな。
今のウチにしておくか。
「俺は神流 睦月だ」
「……柊…飛鳥…」
名前を教えられた辺り、どうやら一歩前進かもしれないな。
人と接しようとしないのに、こうやって会話ができた……俺は少しだけ柊に認められたみたいだ。
俺達は喫茶店に着き、柊をテーブルに着かせた後、バイト服に着替えてマスターに挨拶を交わす。
「やあ睦月君、連れてきた女性は睦月君の彼女かな?」
「いえ、彼女こそマスターが占いをした結果、護衛した女生徒です。
どうやら訳ありらしいですが、心優しい人です」
「へぇ……うん、睦月君ならきっと仲良くなれますよ」
マスターはニコニコと笑顔で、俺を柊の下へと行かせた。
今日は元々、瑞希さんが来る…との理由のみで喫茶店を開店し、来るのは瑞希さんと、俺かマスターが自分から呼んだ人以外は来ない。
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