第二色

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      その後俺は一度喫茶店の奥に入り、専用の機械で珈琲と紅茶を淹れる。   インスタント?邪道だな。 インスタントは確かに淹れるスピードが速いが、そうしたら珈琲や紅茶の本来の味が分からない……と、俺は思っている。 だからこそ俺は自分で淹れるのが主義なのである。       少々時間は掛かったが、俺は二種類の飲み物を淹れ、カップを皿に乗せて柊とマスターに持っていった。         「柊、珈琲と紅茶…どっちが良い?」   「…紅茶……でも、お金…」   「気にはするな、奢りだ」       渋っていた柊だったが、俺は紅茶をテーブルの上に置いた後、マスターに残った珈琲を渡した。 別に処分の為じゃない。 マスターは珈琲と紅茶のどちらでも飲むから、ついでに…だ。     俺はそのまま柊の前に座り、柊が何故着いてきたかを訪ねてみた。       「…別に…家にいても楽しくないから……興味本位なの…」   「そうか、ならば今日は気をつけろ。次に喫茶店にくるお客と大変な事になるぞ」     「あらあら、睦月君の意地悪っ。初対面の女の子の前で何て事を言うんですか?私は普通に睦月君とお会いしたいだけなんですよ…?」         まさに神速…! まったく瑞希さんが喫茶店に入ってきてから、俺の後ろに立つまで、音と気配が感じられなかった……       「瑞希さん、いきなり後ろに立たれたら心臓に悪いです」   「だって、睦月君が意地悪な事言うから……つい」       瑞希さんは後ろから俺の肩から手を出すようにして抱き締めてきた。 すぐ顔の横に瑞希さんの顔があり、そのまま瑞希さんは柊の事を見ていた。   正直なところ、止めて頂きたい。いくら着物姿とは言え、瑞希さんのスタイルは抜群。 女性にのみ存在する自然な膨らみが背中に当たり、少々気まずい。     瑞希さんの性格からして、十中八九わざとなのだが……いくら何でも人前では止めてほしい。       「うふふっ、この子がマスターの言っていた子?…可愛いです」   「……っぁ…ぅ…」       初対面の人にいきなり容姿を褒められたからか、それとも瑞希さんの突然の出現に驚いたからかは不明だが、柊は声を微々に漏らしながら目を泳がせていた。    
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