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瑞希さんは俺から離れようともせず、引き剥がすのも面倒なのでこのままにしておく。
一応、俺も男だ。
内面も良い、瑞希さん程の人に好意を持たれていて悪い気はしない。
………が、未だに瑞希さんは俺の恋愛対象内かは定かではないのは少々瑞希さんに失礼かもしれないな。
「睦月君は…私の理想です…!優しくて気が利いて、心がしっかりして…一緒に居て楽しいです」
「嬉しい事言ってくれますね。でも、俺は瑞希さんが思っているほどの存在じゃありませんよ」
瑞希さんは、俺がそれ以上口を開くのを防ぐように人差し指を俺の口に添えた。
その表情は妖艶で、おっとりとした目つき……まるで俺を幻影に誘うかのように。
「それは、柊ちゃんも私に同意のようですよ…?」
言われてふと、柊を見た。
柊は慌てたように首を横に振り、否定を表していた。
瑞希さんは何か気が付いたようで、含み笑いをしながら俺を抱き締める腕に更に力を入れた。
「うふふ、私が睦月君をお婿さんに頂いちゃいますっ」
「何柊に偽りを言ってるんですか。あなたには遥かに理想の人が居るはずです。
例えばマスターとか……マスターならば、瑞希さんの理想に当てはまっていると思いますが?」
「私は、睦月君が良いのです」
………参った、何をしても瑞希さんは離れようとしてくれない。
ならば多少きつめに言ったら大丈夫だろうか?
思い立ったら即行動、と言う言葉のままに動いてみるとしよう。
「あんまりベタベタするのは俺は好きではありません」
「これはベタベタではありません。甘えているのです」
じょ…状況が悪化してしまった……瑞希さんは一目も気にせずに引っ付いてくる。
柊に助けを求めようと目線を合わせても、紅茶をちびちび口に含んではトロンとした目で和んでいた。
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