第二色

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      少し、聞き取りにくい。故に俺は柊の後ろまで歩み寄った。   どうやら柊は、先程の俺の発言により嫌悪感を抱いているらしい。 その証拠に何度も何度も「可愛い?誰が?何故?」を繰り返していた。   ……凄く…ホラーです……         「おいコラ、ここは関係者以外立ち入り禁止なんだが?」       この声に先程よりも大きく体を震わせた柊は慌てて俺の方へ体を向け、そのまま壁際までずり下がる。   そこまで拒絶されると、どうも傷つくのだが……まぁ、後ろから声を掛けた俺が悪い。       「…きっ…聞いてた…!?」   「ばっちり」       すると真っ赤に顔を染め、「あうあう」と呟きながら膝を抱えて顔を伏せた。 仕方がないから俺は柊の隣に座り、ぽんぽん、と頭を軽く撫でた。   なんとなく行った行為だったが、柊にとっては絶大な効力を発揮していた。       今まで顔を伏せていた柊だったが、急に顔を上げて俺に目線を合わせてきた。   吸い込まれそうな漆黒の瞳。   思わず見つめてしまい、下方からやって来る猛スピードの物体に気が付かなかった。           揺れる視界、朦朧とする意識。唯一理解出来たのは、柊の掲げる拳が全貌を明らかにしていた。     俺は、柊にアッパーカットを喰らった。それもピンポイントに顎を。     人間の顎先を鋭い衝撃が走れば、同時に脳が揺さぶられてしまい、脳震盪を引き起こす。 今の俺の現状がそれだ。   いきなり柊のアッパーカットを喰らった為に、ガードは愚か力さえ入っていない顎に決められた。       女性の手でも確実に男性を倒せることが判明したが、まさか俺自身が実験台になるとは夢にまで思わなかったさ。   柊…恐ろしい子…!    
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