第三色

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      学校から喫茶店までの道のり、俺は沢山の住民から挨拶が交わす。 それは何の変哲もないただの挨拶。ただ、若干のイレギュラーはある。     「……ん」     俺の服の裾を摘みながら歩く少女がそれだ。 少女もとい柊 飛鳥は飛び交う住民の挨拶がある度に体をビクつかせ、俺の体の影に隠れる。   ……決して離れようとはしないのに、顔すら見せてくれない。 柊は顔を隠すようにそっぽを向き、ずっと付いて来る。         「おっ、睦月はんやないか」   「こんばんわ。相も変わらずにこにこと笑顔、眩しいですね」       話しかけてきてくれたのは雑貨屋に務める一人の女性。 彼女は俺が見ている限り、漫画のように瞳を閉じて生活している気がする。 まるで狐、狐目だな。   …はっ!そう言えば、彼女の名前が狐に似ていたような…!? 確か…みつねさん、だったな。 きつね、みつね、似ているのはワザとなのか?みつねさんの両親の作為なのか?       「睦月はん、深入りはダメやでぇ?深入りするならウチを娶ってくれなアカンなぁ」   「いえいえ、俺ではみつねさんを嫁とするのは役不足ですから」   「…そこは冗談でも娶ってくれるって言ってもええやん…」       あからさまにションボリとするみつねさん。彼女は少々言葉にクセがあるが、そこがみつねさんの良い所。 この様に誰にでも気楽に話し掛け、初対面の人にも簡単に仲良くなってしまう。   天性の人柄の持ち主なんだろう。いつの間にか心の中に踏み込み、そして会話を成立させてしまう。   俺も、そんなみつねさんの人柄にやられた一人だったのは秘密。         「うん?そっちの子は……まさか睦月はんのコレなんか!?」       小指をピンと立てて凄まじく驚くみつねさん。目線は柊に向かい、オーバーリアクションかと思う位肩を落としてため息を吐き出していた。   と言うか、なんですかそのリアクションは。俺が女性と歩いていたらマズいんですか?       「せやかて…ウチやて夢見ても罰は当たらんのに……睦月はん意地が悪いわぁ」   「それは何か…すいません」   「気にせんでええよ、ウチが勝手に妄想しているだけや」         うわ、みつねさんの周りに負のオーラが立ち込めている。 ブツブツと何かを呟きながら雑貨屋店内へと戻っていってしまった。    
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