第三色

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        俺は店内へと戻っていくみつねさんに少々悪い気がしたが、今度みつねさんが喫茶店に来た時にうんとサービスしてあげようか。 そうしよう、きっとみつねさんも喜んでくれる。     しかし問題なのはこの少女。 みつねさんの言葉で完全に周りを拒絶し、俺の背中に顔を隠すように埋めて服を強く掴んでいる。       「離さないか」   「……や」       さいですか。 仕方ないので俺はそのまま歩を進め、柊も釣られるようにトテトテと歩く……が、凄まじく歩きにくい。 踵にガツガツと柊の爪先がぶつかるし、その度に柊は俺の背中に頭突きをかましてくる。     ………その状態を五分程我慢していたが、もう限界だった。     俺はその場にしゃがみ込む。 唐突にしゃがみ込んだ俺に不意を突かれ、俺の背中から手が外れて首元に添えられた。 柊の注意が他の所に行っている間、俺は素早く両手を後ろに回して柊の膝裏に掛ける。 そして、無理矢理足に隙間を開けさせて背中を入れ、背負って立ち上がる。   簡単に言うとおんぶだ。   勿論鞄は右手に持ち、手の甲で柊の足を支えている。         「……ッ!?」   「歩きにくいから、俺の好きなようにさせてもらう。これなら俺は柊の顔を見ないし、伏せれば周りに顔を見られない」   「…えっち!」       失敬な。そんな事を言われる筋合いは毛頭無い。こんな事をする羽目になったのは誰のせいだ誰の。 俺だってこんな恥ずかしい事はしたくないが、柊が俺の歩みの邪魔するからこうなるんだ。   死なば諸とも。   恥ずかしい思いを共にすれば良いんだ。一躍有名になれるぞ、ある意味で。         「…そうやって…胸の感触楽しむ…の?」   「今すぐ川に落としても良いんだが?むしろ落としてやる。あぁそうだ、丁度良い所に川があるな」       カチンと来たから、たまたま近くに川があったので、その手摺りの上に柊の腰を降ろして振り落とそうと自らの体を川側に傾けた。   落ちまいと慌ててしがみつく柊だが、問答無用で俺は身震いする。    
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