第三色

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      ……ほら、これでどうだ。一人で歩くか?それとも落ちるか?   だがしかし、柊は負けじと首に腕を回して強く抱き締めてきた。 柊の細い腕で首を的確に締めてくるので、やむなく俺は柊を橋から落とそうとするのを止めて、普通に歩き出した。       「歩け」   「…や」   「降りろ」   「自分勝手…」   「落とすぞ」   「…首絞める」         と、言うような事が続いた。 良い加減面倒になったため、俺は何も言うことなく柊を背負って歩く。   柊が背中に顔を埋めてきたが、別段気にする程でもない。格好から桜華高校生だと判断できるし、注目もなかなか浴びる。   まぁ、状況を見ると俺が体調不良の女生徒を連れて歩いている……としか思われていないだろう。         「―――の」     「何か言ったか?」         本当に、極小の音量で呟かれた言葉は、残念ながら俺には届かなかった。 無言で返されると言う事は、詮索するなとの願いなのだろう。ならば無闇やたらに首を突っ込むのは良くない。               しばらく歩いていると、ようやく喫茶店が見えてきた。     柊を背負ったまま入り口から入ると、そこには先客が居たようだった。 ……先客は瑞希さんなんだが。         「あらあら、そんなに嫌な顔されたらお姉さん落ち込んじゃいますよ…? 傷付いたお姉さんに睦月君の愛を下さい。そうすればたちまち元気になっちゃいます」   「生憎、そんな器用な事が出来るほど高性能ではないので」       まったく、瑞希さんは冗談が重すぎる。マスター、見てないで瑞希さんの暴走を止めて下さい。     「残念ですが嫌です。睦月君とのやり取りが面白いから」     鬼!悪魔!     「褒め言葉として受け取ります。そして私はそんなに生易しくはありませんから」           …………もう、良いです。     気が抜けた俺は落ち込む瑞希さんに柊を差し出した。 瑞希さんは瞳を爛々と輝かせて柊を攫って、本人の有無を言わさずに喫茶店を出てどこかへと連れ去ってしまった。     南無成仏、無事を祈る。    
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