第三色

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    柊を瑞希さんに売り渡し…ゲフン!人徳ある人に任せ、俺はマスターに今日の仕事内容を聞き出す。     どうやら、今日は瑞希さん以外にとある人物が来るらしい。その方は俺も面識があり、気軽に接客できる…と。 そこまで言うなら随分と気を張らずに対応ができるやもしれないな。俺としてはその方が楽だし、街の住民との交流が上手く承れると言うことだ。     その方が来るまで、俺は串団子を用意。こしあんでくるまれる白玉を四つ、串に突き刺された物計四本を彩色された皿に乗せ、いつでも熱い緑茶を出せるように準備する。   マスター曰わくこれを用意して、後は俺が接客すれば完璧らしい。なかなかどうして、随分と昔ながらの物を好物とするお方だ。 して、だからと言って別段どうと言う事でも無い。人の好物に口を出すほど、俺は墜ちてはいない。       おっと、どうやらそのお客様がいらっしゃったようだ。       「睦月はん、憩いに来たでぇ」   「来客とはみつねさんの事でしたか。さぁどうぞ、串団子と熱い緑茶をお持ちいたしますよ」   「んふふ、悪いなぁ」       やって来たのは少し前に雑貨屋で会話を交わしたみつねさんだった。 どうやら彼女は仕事が終わったらしく、息抜きにでもしにこの喫茶店へと来たのだろう。   そう、みつねさんには会話を交わした時に傷つけた発言をしたようだったな。ならばせめてもの罪滅ぼしに、この串団子と緑茶の代金は俺が払おうではないか。         「んぅー!絶品やなぁ、ここの串団子は!ほんのりとした甘味に、滑らかなこしあんの舌触り、そんでもって歯ごたえのあるモチッとした白玉…最後は絶妙な茶葉で淹れられた緑茶。 ウチはなんて幸せなんやろうか…あぁ、ウチはこの街に居るのを誇りに思うでぇ!」     「大袈裟ですが、そこまで褒めて頂けると俺も嬉しいものです。幸せそうに団子を頬張るみつねさんを見ていて、何故だかお礼がしたくなりました。 ここは、みつねさんの笑顔を見せて頂いた代わりに、代金は要りません…とお伝えしましょう」         それ程までに、みつねさんが団子を口にする姿は俺を良き気分にさせてくれた。 だがしかし、みつねさんはいきなりの俺の言葉に、虚を突かれたように惚けていた。  
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