第三色

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      まぁ、そんな言葉は建前で、本音は罪滅ぼしだがな。 それでも、みつねさんには効果覿面だったようで、あっと言う間に笑顔と言う花が咲いた。 その笑顔は天真爛漫、純粋無垢が入り混じる無邪気な笑顔。   不覚にも、その笑顔にしばし魅入ってしまった自分に思わず苦笑。     「ええの?ウチ、そんなつもりはあらへんよ?」   「はい、むしろ奢らせて下さい。何故だかつい先程、みつねさんに不快な思いをさせてしまったみたいですし…それに関しても、償いたいので」     それを聞いて、団子を一つ頬張るみつねさん。 パッと、再び咲き誇る笑顔。 その後には口元に人差し指を添えて考える格好をとる。その間も団子の咀嚼は止めず、モクモクと効果音が鳴りそうな食べ方で考え続けていた。   不意に、何か考え付いたのか、手のひらを叩いて此方へと目線を合わせる。みつねさんは椅子に座り、俺は立っているので必然的にみつねさんは俺を見上げる形となった。 相変わらず線のような目をしているが、うっすらとその線が二重になっていた。       「そいじゃ、睦月はんに奢ってもらう代わりに……睦月はん、ウチと遊ばんか?」   「みつねさんと、遊ぶ?」     いきなりの提案に、少々戸惑ってしまう。これでも今はバイト中だし、バイトも始めたばかり。いくら何でもマスターに迷惑が掛かってしまう。   流石にそれはマズいので、断りたいと思う――       「ウチと、遊ぶの嫌…?」   「………今は駄目です」   「じゃあ終わるまで待っとる」       どうもこの方は、借りた恩はその日の内に返したい人種のようだ。それが悪い、とは言わないが、場合によっては周りに迷惑が掛かる時もあるのを理解して頂きたい。   しかし一体、みつねさんは何をして遊ぶのだろうか。遊ぶと言っても、一括りには出来はしない。 目的を持って何か共にするのも遊び。逆に何も持たずにブラブラとするのもまた遊び。ただ、こうやって会話をするのでさえも、遊び。     はてさて、みつねさんの言う遊びとは一体何なのであろうか。    
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