第三色

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    それからと言うものの、柊を拉致した瑞希さんが艶やかな笑顔をして帰ってきたり、柊が尋常でないほど重い雰囲気で瑞希さんに抱っこされたりなど…… 主に瑞希さんが柊を弄っている光景が飛び込んできた。   他には結構の人数客が来て、俺一人でウェイターの仕事をするのは辛かった…位だな。基本的に皆、良い人ばかりなので多少待ってもらっても大丈夫だった。     やはり瑞希さんと柊の絡みが印象的で、否が応でも記憶に残っていた。 そう言えばみつねさんは、俺が働く姿を飽きもせずにジッと見守っていてくれた。ぼーっと見ていて何が面白いのだろうか?   ……何はともあれ俺は喫茶店の仕事を最後までやりきり、喫茶店を閉店した。     「ではマスター、お疲れ様でした」   「お疲れ様睦月君」   「あらあら?飛鳥ちゃんったらそんなに怖がらなくても大丈夫ですよー」     柊は怪しく笑う瑞希さんに怯え、俺の背中に隠れてこっそりと瑞希さんを覗いている。 全く、瑞希さんは柊の事を気に入ってしまったようだ。柊には悪いが、瑞希さんに気に入られたらドンマイとしか言えない。   柊と瑞希さんは水と油、蛙と蛇、ハブとマングースみたいな関係だな。 瑞希さんは柊と仲良くしたいらしいが、柊が人見知りで他人と仲良くしたくない…みたいな事を言っている。   更に言ってしまえば柊は瑞希さんに恐怖しているから、仲良くはなりにくいかもしれない。       「では、俺はみつねさんとの約束があるので」   「行こか、睦月はん」     柊を引き剥がし、みつねさんと行こうと…行こうと…行けない。 柊が俺の背中の服を摘み、離れようとしない。 何事かと思って振り返ると、柊は無表情を崩し、瞳が潤んで俺を引き留めていた。   みつねさんは頬を掻き、少々考えていると、右手で左手のひらをポンと叩いた。。そして柊の隣に行くと、何気なく話し掛ける。     「ウチ等と一緒に行かへんか?二人もええけど、三人だともっとええで?」   「…………」     柊は一分少々無言で考え、コクンと小さく頷いた。 屈折無いみつねさんの笑顔に、柊の閉ざしていた心の扉を開かされたのだろう。 相も変わらず、みつねさんは凄い人だ。俺には柊と接するのに時間が掛かったのに、あっという間に柊の信頼を得てしまった。 雰囲気…それが柊が信頼する際に必要らしい。 みつねさんはそれに合格した、と言う事か。    
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