第三色

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    楽しそうな表情でみつねさんは俺の右手を握り、反対に無表情のまま柊は俺の左手を握りながら歩いていた。   俺からしてみたらハーレム状態なのだが、第三者から見たら俺は女誑しに見えるだろうか? いや、もしかしたら俺達が兄弟に見えるかもしれない。   みつねさんが長女で柊が次女。俺が長男で仲良し兄弟…みたいな?     「ウチの取って置きの場所に案内するから着いて来てな?睦月はんと飛鳥はんだけに教える秘密の場所やでぇ?」 「誰にも口外するな、ですね」 「ん」 口に人差し指を添え、シーッと黙っているような格好をするみつねさん。 柊もそれに同意したのか、小さく声を出して頷いた。 そしてその後はみつねさんに手を引かれる形で秘密の場所へと連れて行かれる。 あまり距離は遠くなく、すぐに到着する場所。   俺達が住む街で知らない人など居ない、有名スポットとされているこの街最大の丘。 有名と言えば有名だが、何故か一般的に人が寄り付かない不思議スポットでもあった。 時刻は深夜、丘の上から一望できる街の全貌は優雅で壮大な光景だった。 沢山の家の窓などから発せられる蛍光灯の光が月夜に輝き、美しい光の景色を造り上げていた。   その壮大さに思わず俺は声を漏らし、左手を掴んでいる柊の手に力が入っている。柊もこの夜景に感動したらしく、ジッと眺め続けていた。 「どや?ウチの取って置きは。元々この丘には人が来いへんし、こない時間帯に来る奴は更におらんから独り占めなんやで?」 「凄いです…一瞬で引き込まれてしまいましたよ」 「せやろせやろ!?」 くぅー、と嬉しそうな声を出したみつねさん。 自分のお気に入りの場所を他人にも気に入られ、気分が高揚しているようだ。   ……しかし二人共、こんな時間帯に出歩いていて良いのだろうか? 俺は一人暮らしだから支障はないが、二人にとってはどうなのだろう。  
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