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風呂を洗うのに少々時間が掛かり、今は湯を張っている。
その間、俺はみつねさんに今日の経緯を聞いてみた。
鍵を落とした原因が分かるかもしれないし、闇雲に探すよりも確実である故。
「んと…喫茶店に来た時は確かにあったんよ。それで、睦月はんと柊はんと一緒に丘へ行ったのと、家に帰ってきただけやで」
「……特に落とすような状況にはならなかった…ですか」
ならば服のどこかに入れたまま、忘れているのかもしれない。
そんな事を口走った途端、みつねさんは手をポンッと叩いて色々なポケットを探し始めた。
胸ポケットやズボンのポケット、後ろにも手を入れていたが、どうやらハズレのようだ。
まぁ、散々探した上で俺の所へ来たんだ。こんな事で見つかったら世話が無いだろう。
「どうしよ…ウチ帰れへん…」
「とにかく今日は泊まって、明日探してみて下さい。俺は学校があるので、帰ってきてまだ見つかってなければ一緒にさがしますから」
「すまんなぁ、睦月はん」
申し訳無さそうに顔を伏せるみつねさん。
俺はそんな彼女の頭に優しく手を乗せた後、サラサラとした髪をグシャグシャに乱した。
「うゃぁぁっ!?」
「気にし過ぎです。そろそろ湯も溜まっただろうから、先にみつねさん入って下さい」
「うー…いや、ここは睦月はんに先に入ってもらいたいんや。何もかも優しくしてくれたお礼…と言うか何と言うか」
みつねさんなりの好意なのだろうか……ならばそれを断るのは失礼かもしれない。
先に風呂に入ると伝えると、俺は風呂場へ向かった。
みつねさんの瞳が怪しく光っているとは気付かずに――
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