第一色

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      待って、いたんだが……そいつは何故か先に行こうとはしない。 このままでは埒が開かないから、俺から話しかけてみた。       「俺がいると邪魔になりそうだからな。先に進むと良い。俺はゆっくりと帰らせてもらう」   「………」       そいつは、俺と正反対の廊下の端を通り、限界まで俺と距離を取りながら逃げるように走り去っていった。   やはり、俺がいたら邪魔だったようだ。俺はどうせマスターのいる喫茶店のバイトがある。         精神的にきていると言われた俺は、少々落ち込みながらバイト先へと向かうことにした。                                                 喫茶店へと到着するとすぐに、喫茶店で働くための仕事着に着替える。 ウェイター服に着替えると、喫茶店の店長であるマスターが出迎えてくれた。   そう言えば、マスターに頼みごとを伝えるように頼まれたんだったな。     俺は忘れないうちに、マスターに桜華高校の教師に頼まれた内容を伝えた。 何故か、マスターに接触できる人間は限られているらしい。 マスターは神出鬼没で、喫茶店のバイト以外の時間帯は何時、何処で何をしているか不明だそうだ。       確かに、そう言われてみると、俺自身マスターを喫茶店以外で見かけたことがない。 もしかしたら何か秘密の研究をしているとか……って、そんな事ある訳ないか。         「そうそう睦月君、今日はどうやら厄介な出来事を身に受けなかったかい?」   「……いえ、そんな事は一切ありません。強いて言うなら、不思議な女生徒に出会った…ですかね」       そう言うと、マスターはうんうんと頷き、俺に一枚の紙を差し出してきた。紙を受け取ると、それにはこう書かれていた。     今宵、睦月君の自宅前で恐らく桜華高校の生徒を見かけるでしょう。 決してその人を一人にはさせないこと。万が一、一人にさせてしまった場合……     何ともピンポイントに伝える文章だろうか。 マスターの方を見ると、占い時に使うようなタロットカードを右手に持ちながらニコニコと笑顔を作っていた。      
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