第一色

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        「最近はタロット占いにハマってましてね……今のところ百発百中の占いですよ」   「マスター、信じますからね?俺が彼女を護れ…と」       マスターは笑顔のまま頷き、それと同時に一人の女性客が、喫茶店へと来店してきた。 すぐさま対応し、その女性客に近付いていったら、なんと顔見知りの女性であった。     その女性の名は、瑞希さん……何故か名字は教えてくれず、下の名しか呼べない。 彼女は一言で表せるならば、『大和撫子』が最も似合う存在だ。   何よりも、毎日着物を着て生活しているのが特徴とも言える。 加えて、彼女はこの街の酒屋を経営している店長でもある。       何故、酒屋なのかさっぱり分からないが、瑞希さん自身が多少の酒を飲むからだろう……恐らく。     ともかく俺は瑞希さんをテーブルへと着かせ、注文を取る。       「えっと…睦月君で」   「生憎ですが、当店にはそのようなメニューはございません」     真面目で柔らかな表情をして冗談を言うから、瑞希さんは少々困った存在だ。 そう言えば、初めて瑞希さんと出会った時……色々あった……色々。   まぁ、こんな話はまた今度でもするとしよう。今は瑞希さんとの会話に集中するか。         「じゃあ、また今度の夜……お願いしますね…?」   「分かりました。今日はそれを伝えにここへ来たのですか?」     「いえ、今日は無性に睦月君の顔が見たくなりまして……うふふ…私も一人の女ですから」           こんな事を真顔で言うのは止めていただきたい。 一応俺も男な訳であるし、瑞希さんのような容姿の美しい人に言われたら勘違いをするだろう。   大体、瑞希さんは不明な所が多すぎる。俺の把握している内容だけでも、ごく僅かだ。    
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