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離婚して実家に戻って数日
納屋の中に、埃だらけの赤いガンマを見つけた。
つい引っ張り出して、洗ってみる。
3時間も洗っていると、娘がやってきた。
「お母さん、なにそのバイク?」
「ん?お母さんが若い頃乗ってたんだよ」
「うそ、乗れんの?」
「失礼な~お母さん早いんだよ」
ピカピカで、あの頃のままのようだ。
コックをひねり、キーを回す。
掛からないだろうと思いながら数度キックを下ろす。
バラン、バラバラ~
まさかと思いながらも、胸が躍る。
納屋からスポンジが粉になってるメットを持ち出して、粉を払ってかぶってみる
「お母さんカッコいいよ、バイクって面白い?」
「乗ったらわかるよ」
エア良し、アイドル良し、オイル良し、灯火良し
お父さん、自賠責かけててくれたんだ。
じゃあ整備もかな?
「お母さん、あたし乗りたい」
「ダメよ、ユキが免許取ったらね」
跨って、スタンドを蹴る。
「じゃあ免許取ったら、このバイクちょうだい」
「もっと安全なのにしなさい、反対はしないから。」
たるんだ下腹に力込めて、内股の当たりを確かめて…
クラッチ切って、ギアを入れる。
ガツンとチェーンが張る。
「意外だな~お母さんがそんなこと言うなんて」
「ん?」
「今までは危ない事するなばっかだったじゃん」
「バイクはね、自分に厳しくないと転けちゃうの。進む気持ちあれば、行きたいとこに連れて行ってくれるものよ」
「素敵だね」
アクセルをひとつ、ふたつと自分にカッコつけて
クラッチをつないでみる。
久しぶりに大観望でも目指してみますか。
あたしの初恋のガンマ君で…久しぶりにあの頃のあたしに戻って。
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