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「シデン!ねぇ!シデンってば~」
とある少年の後方より放たれた音声は、炎色の髪を持つ彼をその場に止めた。
少年の名は、《シデン・アルターナ》。
十七歳。
いつもと変わらぬ、寝癖でグシャグシャになった深紅の髪と、三白眼が彼の特徴であった。
「どうしたアイリ?」
シデンは振り返りざまに、声の主を正面にとらえると、息を切らして彼の元へ駆け込んできた少女がいた。
彼女の名は《アイリ・レイナード》。
同じく十七歳。
シデンとは十五歳からの知り合いで、共に学校へと通っている。
癖っ毛の無い黒のセミロング、大きな瞳に整った顔立ち。
身長が百七十五センチあるシデンに対し、百五十三センチと、やや小さめのアイリが目前にいた。
そのアイリの様を見て、シデンは思わず眉をひそめた。
「オイオイオイオイ……急ぎすぎだろ」
何だか気の抜けてしまうユル~イ声で、苦笑いしながら会話を促すシデン。
「シデン忘れてたでしょ!?」
ハァハァと、まだ息が整ってないのに一呼吸でいいたいこと告げたアイリ。
「今日は一緒に帰る約束、してねーぞ?」
「違うわよ!…………ふぅ。進路についてのこと」
「あぁ~」
ポンッと手を打ちながら、シデンはようやく記憶を掘り返した。
「そういや……忘れてたわ」
「もうっ!ちゃんと話聞いてないから」
腰に両手をあてて、アイリは呆れたようにため息をついた。
「というかさ~。前々から思ってたんだけどさ~。何でそんなに俺のこと気にするワケ?正直どーでもよくね?」
「よくないッ!!!」
「う……な、何で!?」
想定外の反撃を受けたシデンは、一瞬たじろぎ後ろに重心がズレた。
「それは……その……シデンのことが━━━━━━」
「俺のことが?」
ほんのりと頬を紅潮させていたアイリだが、すぐにぷいと後ろを向いてしまう。
「シ、シデンはいつもバカげたことばっかりするから不安なのよ!……クラスメートとして」
「バカとはなんだ!バカとは」
すぐさま体制を立て直して抗議を始めるシデン。それは戦時下とは思えぬ、頬笑ましい光景だった。
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