謳われない史実

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男は寝たきりになった。 妻子のいない男を看たのはヴァッサゴだけだった。 「お前は…何を求めてきた」 男は問い掛けた。 ヴァッサゴは一度目を伏せてから、ゆっくりとその紫電の瞳を開けた。 「私は見たかっただけです…かつて起きた、天高き場所での戦いの要因たる貴方方の…人間の今を」 懐かしむようで悲しそうな色をした瞳を持ってヴァッサゴは言った。 「貴方方は知らないでしょう。あの戦いで多くの天使が堕ち、命が消えたことを…」 闇に点々と家の光が灯る外を郷愁を感じさせる顔で見つめていた。
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