5人が本棚に入れています
本棚に追加
男は筋くれたった手を伸ばした。
ヴァッサゴはその手を優しく包んだ。
真っ白な柔かなな手で。
「お前は何故…堕ちた?」
それは会った時から気になっていたことだった。
ヴァッサゴはあまりにも優しく美しく…闇を見いだせなかった。
ヴァッサゴは黙したまま目を反らした。
「私の命は…今宵で失せる…ならば、最期ぐらい教えてくれ」
男はもうぼやけてしか見えないヴァッサゴの顔を見つめて、皺がれた声で言った。
「聞けば魂すら消される定め…それでもですか?」
紡がれた沈んだ声に男はただ一度、頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!