知ってはならない

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「…偽りの者が…」 ヴァッサゴは剣を握ると無理矢理抜いた。 手の平が斬れて血が滴り落ちる。 「貴方なんか…ミカエル様に遠く及ばない…」 紫電の瞳は稲妻のように鋭く紅い瞳を睨み付ける。 それを冷たく下す。 「何もせず、ただ、あの方の栄光に付けられた人形の癖に!」 憎しみを込めた瞳が一際煌めいた瞬間、 再び、剣は振り下ろされた。 「…そんなこと…僕が一番わかっているさ」 灰となりさらさらと消えるヴァッサゴの身体見つめながら、それは呟いた。 冷たい瞳で。 唇を噛み締め。 それは純白の翼を広げ、空へと帰った。 灰と化したかつての同胞と 中身のない老いた器だけを残して。
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