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ゴードン軍曹が、数時間ぶりの水を夢中でむさぼっている頃。
その左胸に、狙撃兵はスコープの中の十字を合わせていた。
時おり風にゆれた葉で視界が遮られるにも関わらず、狙いはひたりと落ち着いている。
標的は、自分の命を他人に握られている事にまったく気づかないまま、水筒の中身を今にも飲み干そうとしていた。
せわしなく上下する白い喉も。
生理的な喜びに震える両手も。
自分が引金を引けば動かなくなる。
狙撃兵は一度ゆっくりとまばたきをして、人差し指に力を込めて、
「なにをしているんですか?」
突然聞こえた声に、驚いて指を離した。
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