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次の日の朝。
狙撃兵はまだ空が暗いうちに起きた。
潜んでいた木のうろの中で、ライフルを分解して部品の掃除をする。
弾倉を確認すると、昨日撃った五発分、空きがあった。補填して再びセットする。掃除がすんだ部品から順に、再び組み立てていく。
東の空が白み始めるころ、バラバラになったライフルが銃の形を取り戻した。
狙撃兵は一度スコープを覗いて、ズレがないか確認した。
そして立ち上がろうと身を起こして、ふと横を見て、
「……」
動きを止めた。
狙撃兵が休んでいた場所のすぐ横に、天使が体をまるめて眠っていた。
大きな目がふせられて、睫毛が頬にうすく影を落としている。
規則的に上下する肩も、地につけられた翼も、例によってまったく汚れていなかった。
狙撃兵は天使を見ながら、しばらく固まったまま何かを考え込んでいたが、やがてライフルを肩に背負うと、眠っている天使を残してそこを立ち去った。
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