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グラン・マルクス少尉は森の中を、慎重に周囲を見まわしながら歩いていた。
腰を低く落とし、ライフルの引き金につねに指をかけている。
白いほほにじっとりと汗がにじみ出て、彼の緊張を物語っていた。
数メートル後方では、彼が所属する隊のメンバー四人が、彼よりもさらに息を潜めて進んでいた。
マルクス少尉は先陣をきって森を進み、みずからの安全で隊の安全を証明する。
彼が撃ち殺されれば、隊は進路を変え、別のひとりを先頭に立たせて進む。
マルクス少尉は開けた場所に出た。
鬱蒼とした森が急にとぎれ、そこに小川が流れていた。
暖かな日の光がさし、水面をきらめかせている。
マルクス少尉は悩んだ末、ゆっくりと息を吐くと、茂みから一歩、外に出た。
銃弾は飛んでこなかった。
マルクス少尉とほかの四人は、同時に安堵のため息をついた。
「休憩だな、水が飲める」
「何時間ぶりだろうな」
「おいフィル、ポテトチップス持ってたろ。開けようぜ」
緊張感のない会話が始まる。
「グラン、お疲れ。休もう」
アンリ・トトゥ大尉がマルクス少尉に声をかけた。
マルクス少尉は少年のような笑顔で振り向いて、うなずいて、
その左肩が血をふいた。
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