一日目・川辺で

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 狙撃兵が樹上で獲物を待っている頃。  フリッジ・ゴードン軍曹はひとり、隊からはぐれて森の中をさまよっていた。  ブーツの紐はほとんどほどけ、足を支える役目を果たしていない。  荷物で膨れたナップザックは肩からずり落ち、歩く振動で大袈裟にゆれる。  顎を突き出して息を荒げ、ずれたヘルメットが視界を邪魔するのも頓着しない。  死にたがりの男はどすどすと無遠慮な足音をたて、着実に狙撃兵の射程範囲に近づいていく。
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