189人が本棚に入れています
本棚に追加
福原千尋は本日より自分の家となる建物を見て愕然とした。
「ボロすぎ…。」
千尋の実家も人に自慢できるほどにボロくて古いが、この目の前の建物はそれを遥かに凌いでいた。
千尋は今年、大学への進学と共に、栃木県のド田舎から東京に出て来た。
幼い頃から都会に憧れており、大学は東京にすると随分昔から決めていた。
両親の反対を押し切っての決断である。
決して裕福ではない千尋の家。
東京に出て一人暮らしをするとなると、それなりに金が掛かる。
毎日の食生活から大学の学費、その上家賃まで掛かるのである。
いくら千尋が寝る間も惜しんでバイトに励んでも、学生生活との両立はかなり難しいだろう。
一人暮らしの学生生活をすれば、今まで以上に貧乏になるであろうことは覚悟の上であったが、やはり夢にまで見た東京での暮らし。
千尋としては、華やかに楽しく過ごしたかった。
そんな時だ。
この物件を見つけ出したのは。
チラシを見た瞬間、千尋は文字通り目を見開いた。
『家賃月額五千円』
千尋はすぐさま入居を希望した。
最初のコメントを投稿しよう!