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吉田虎次郎に連れられ中に入った千尋は、建物の中を見回し、目を点にした。
玄関を入った所で靴を脱ぎ、明らかに手作りだと分かる下駄箱に収める。
真っ直ぐに伸びる廊下の両側には部屋のドアがいくつもあり、それぞれにネームプレートが掛かっている。
「この一番手前の部屋が私の部屋です。
その向かい側の部屋が台所ですので、炊事をする時にはここを使って下さい。」
淡々と説明していく虎次郎に千尋はエッと声を上げる。
「共同なんですか?」
すると虎次郎はあっさり、「はい、そうです。」と告げた。
「その他にも便所や風呂は共同となっています。」
千尋はげっそりとした。
「風呂は中から鍵がかけられますので安心して下さいね。」
千尋は曖昧に頷いた。
歩く度にギシギシと悲鳴を上げる廊下。
しかし、取り合えずば掃除されているのか、見た目は古くとも床には埃一つ落ちておらず、外観に比べれば中は幾分かましであった。
「特別な用事が無ければ毎週日曜日は六時に起床し、皆で掃除です。
また週に二日、水曜と日曜は午後八時から夕食会なので、なるべく参加して下さいね。」
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