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「後は…そうですねぇ。
あぁ!
誰かの誕生日の日は皆で宴会をしますので。
千尋さん、お酒は?」
「ま…まだ未成年ですので…。」
千尋はもはや何も言わなかったし、尋ねなかった。
数々の不可思議な行事の主旨を尋ねても「親交を深めるためです。」と穏やかな笑顔で言われると思ったからだ。
「朝食はどうなさいます?
他の皆さんはだいたい六時から七時ですが。
もちろん、ご自分で用意しても構いませんが、よろしければ私が用意しますよ。」
「じゃ…じゃあ、七時くらいで…。」
千尋は思わずそう言ってしまった。
「七時ですね。
必要ない時は、あらかじめ言って下さいね。
と言っても、作るのは私ではないのですが。」
虎次郎はカラカラと笑った。
「では、誰が作るのですか?」
「ここに住んでいる女人の方です。
炊事洗濯は、頼めば彼女がやってくれますよ。
さぁ、ここが千尋さんの部屋です。
困ったことがあればいつでも気軽に言って下さいね。」
虎次郎は奥から二番目のドアの前で立ち止まった。
そこには『福原千尋』と達筆に書かれたネームプレートが掛けられている。
「荷物はもう中に運んでありますので。」
「はい、ありがとうございます。」
千尋は自分の部屋に戻って行く虎次郎を見送った。
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